日本土壌協会の案内
2023年4月現在活 動
当協会は、土づくりに関する全国唯一の公益法人として、①土壌医検定試験・資格登録事業と関連する研修事業(2012年度から)、②土壌診断と営農改善の支援、③土づくり資材等の特性や効果の評価試験、④堆肥等の品質認証や利用の調査・試験、⑤土づくりに関する普及・啓発活動とともに、⑥土づくり推進のための関係協議会等の事務局として活動を行っています。
土壌医検定試験 ・資格登録と土壌医の会組織化推進
土壌医検定試験
近年、公的機関を中心に土づくりの専門家が少なくなってきており、2008年の肥料価格高騰の際にはコスト低減を指導する人材不足が重要な問題となりました。
このため、当協会では2012年度より人材育成と土づくりの普及を進めていくため、土壌医検定試験・資格登録事業を開始しました。
土壌医検定試験は1~3級の試験区分があり、自己の知識や技術レベルに応じて受験できるようになっています。また、土壌医検定試験を目指す方に対しては、研修会を行っています。
例年、約3,000名の方が受験されており、最近では農業者、農業法人や学生、JAの方の受験者が増えています。
資格登録
検定試験合格後は、当協会に登録していただくことによって、土壌医(1級合格者)、土づくりマスター(2級合格者)、土づくりアドバイザー(3級合格者)の名称を用いることができます。
資格登録者は、土づくりの指導など公益的任務を担うことから、レベルの維持、向上のため研鑽が求められます。当協会では資格登録者の土壌診断のレベルアップのための研修会等を開催しています。
資格 | 検定試験 | 技術・知識レベル |
土壌医 | 土壌医検定1級 | 土づくりについて高度な知識・技術を有し、また、5年以上の指導実績又は就農して土づくりに取組んできた実績を有する者で、処方箋作成とともに施肥改善、作物生育等改善の指導ができるレベルにある者 |
土づくり マスター |
土壌医検定2級 | 土づくりに関し、やや高度な知識・技術を有するとともに、土壌診断の処方箋を作成できるレベルにある者 |
土づくり アドバイザー |
土壌医検定3級 | 土づくりに関する基礎的な知識・技術を有し、土づくりアドバイザーとして対応できるレベルにある者 |
土壌医資格登録者数は、年々増加しており、2023年3月末現在では4,030名となっています。
〔土壌医検定資格登録者数〕 (名)
資格名 | 2023年3月末 |
土壌医 | 255 |
土づくりマスター | 1,130 |
土づくりアドバイザー | 2,645 |
合 計 | 4,030 |
土壌医の会の組織化等による土づくりの普及
当協会では資格登録者を中心とした研鑽と交流の場であるとともに、土づくりの普及を担う組織として土壌医の会の組織化を進めており、現在、地域土壌医の会22組織、事業体土壌医の会が17組織で計39組織が結成されています。最近の特徴として、地域土壌医の会が増加しています。
〔土壌医の会の組織化状況〕 (2023年3月末)
区 分 | 設置数 | 備考 |
土壌医の会全国協議会 | 1 | 2017年3月結成 |
地域土壌医の会 | 22 | 北海道オホーツク、札幌、青森県南、秋田、茨城、首都圏、柏、両総、信州、新潟県、三重県、近畿、広島、山陰、愛媛、高知、九州、北部九州、福岡、大分、宮崎、沖縄 |
事業体土壌医の会 | 17 | 企業内の土壌医の会 |
計 | 39 |
また、土壌診断に基づく作物生育等の改善や土づくりの普及活動を一層推進するため、2018年度から優れた成果をあげた土壌医の会の正会員に対して表彰を行っています。
2019年度からは農林水産省の局長賞が授与されるようになりました。
農林水産省農産局長賞の授与 |
土壌等の分析・測定結果に基づく作物生育等改善の診断業務
生物性等も含めた豊富な分析・測定メニュー
当協会の分析・測定メニューは、土壌の化学性、物理性や生物性とともに、堆肥の分析や腐熟度の測定など豊富に取り揃えており、総合的に分析・測定が行えることが特徴です。土壌の化学性や生物性の分析については、専門の分析機関と提携して行っております。近年、土壌病害やセンチュウ害が重要な問題となっていることから、特に生物性のメニューを充実させています。また、地力の向上やコスト低減の観点から注目される地力窒素(可給態窒素)の分析もメニューに追加しています。
経験豊富な専門家による分析・測定結果の診断・解析
土壌等の分析・測定の当協会への依頼元は、農家とともに、農業生産法人、フラワーパーク、資材関係企業等と多様です。土壌等の分析・測定結果の診断や解析については、研修会の講師等を行っている当協会の専門家が対応しています。
また、この他、現地に出向いて産地の作物収量、品質の底上げのため土壌分析・測定の結果を解析し改善提案も行っています。
土壌物理性測定の実施状況 | ホウレンソウ葉の黄緑斑の障害 [pHが高いことによるMn欠乏症] |
土づくり等各種資材の特性とその効果評価試験
堆肥、土壌改良資材等の特性や栽培評価試験
各種堆肥、土壌改良資材等の特性評価や圃場での栽培評価試験を企業等から受託して行っています。堆肥等以外にも多くの資材について、室内での特性試験とともに、試験圃場での栽培試験を行っています。依頼内容により土壌の化学分析、物理性調査、生物性解析、作物の生育、収量調査とともに、作物品質等の分析も行い、その試験調査結果を報告書としてまとめております。
メタン発酵消化液の圃場試験等の特性試験(右)
新資材(バイオスティミュラント等)の評価試験の相談と農家圃場での実証試験
作物の生育促進等の効果が高いと考えられている新たな資材で、その資材の適切な効果評価を行うための試験設計の相談を行うとともに、その試験内容に相応しい農家圃場や農家の育苗施設で試験を行っています。試験設計の相談や実証試験の実施は経験豊富な当協会の専門家が対応しています。最近は、作物の活力増進等で関心の高まっているバイオスティミュラント資材関係の試験依頼が多くなっています。
堆肥の品質評価と改善アドバイス
食品リサイクル堆肥の品質証明(FR認証)
堆肥は十分熟成した品質の良いものが求められますが、一般に品質にバラつきがあります。食品リサイクル堆肥については、当協会がその認証機関として申請に基づき堆肥の発芽率、発酵温度等を確認し、品質証明(FR 認証)を行っています。
特に、品質評価で特徴的なのは、堆肥中の病原微生物(大腸菌等)に関する安全性を確保するため、発酵温度のチェックを行っていることです。
発芽試験 | FR認証マーク |
各種堆肥の品質確認証明
品質の良い堆肥の普及を図るため、使用される原材料を問わず、各種堆肥や汚泥コンポストの品質の確認事業も行っています。
なお、品質改善が必要な堆肥については、改善のアドバイスを行っています。
デジタル土壌図の営農現場での利活用推進
土性等が表示できグーグルアース等で利用できるデジタル土壌図
デジタル土壌図は、①作物の生育に適した圃場の選定(適地選定)②土壌改良や施肥設計を進める上での指針として活用でき、当協会が著作権を保有しています。当協会の土壌図は、特に保肥力に関係する土性やCEC等の情報が分かり、営農現場で活用しやすくなっておりますが、利用目的に合わせより使いやすく編集することもできます。(土壌図データCD-ROMとして有償頒布)
土壌図の表示例 | 土性図の表示例 |
刊行物の出版等
定期刊行物の刊行
指導的農業者や土壌医資格登録者等を対象として現場向きの技術情報誌である「作物生産と土づくり」(隔月誌) (旧「土づくりとエコ農業」)を刊行しています。 読者の方々の大きな関心事項である作物生育、収量、品質の改善と土づくりとの関係をより重視して編集しております。 |
土壌医参考書の出版
土壌医検定試験1、2、3級対応の参考書や既出問題集を発刊しています。参考書は受験用としてのほか、現地での土づくりや土壌診断等の実施の手引き書としても、また、農業高等学校及び農業大学校の副読本としても活用されています。
検定試験の級別問題は、これらの参考書から出題されます。
なお、2023年2月には全面改訂した3級参考書を刊行し、同年4月には一部改訂した2級参考書を刊行しました。
(1級参考書) | (2級参考書) | (3級参考書) | (既出問題集) |
各種土壌関係刊行物の出版
「土壌、水質及び植物体分析法」、「堆肥等有機物分析法」、「土壌改良と資材」、「全国農耕地土壌ガイドブック」等の刊行物を出版しています。
関係協議会等の事務局活動
土壌医の会全国協議会の活動
土壌医等資格登録者の研鑽や人的交流の場である土壌医の会の全国組織として土壌医の会全国協議会 (事務局:(一財)日本土壌協会)が2017年3月に結成されました。
土壌医の会全国協議会では次のような活動を行っています。
♦土壌医の会全国交流大会の開催(優良土づくり推進活動の表彰、講演会等)
♦地域土壌医の会との共催で地域重要問題研究会を開催
♦処方箋作成に役立つデータや活動事例の収集整備
♦農業高校、大学校等への出前研修の実施
♦地域土壌医の会が実施する土づくり普及に関する研修会等に対する助成
土壌診断デ-タベ-ス構築推進協議会の活動
「データ駆動型土づくり推進事業」(2020年度~2022年度 農林水産省助成事業)は、日本土壌協会、土壌医の会全国協議会、NTTデータ等を構成メンバーとする「土壌診断デ-タベ-ス構築推進協議会」(事務局: 日本土壌協会)が実施主体となって推進しました。
本事業は次のような特色があります。
♦従来の次作の施肥改善を主な目的とした化学性診断のみではなく、物理性測定、圃場カルテの診断を加えて作物の生育等の改善に重点を置いて実施しました。
♦この手法により多くの産地で作物の生育等の劣る要因を明らかにするとともに、その改善を図り、その結果をデータベース化しました。このデータベースは、今後の土づくり推進に活用していくこととしています。(2020年度~2022年度に35道府県において計約11,600圃場で調査を実施)
(写真)土壌調査法について地域土壌医の会の皆さんの現地での演習状況
土づくりの推進(土づくり推進フォーラム、全国土壌改良資材協議会等の活動)
土づくりに関心を持つ個人、団体、企業、研究者等で構成する「土づくり推進フォーラム(任意組織)」を組織化し、土づくりに関する講演会、シンポジウムを開催しています。
また、各種土壌改良資材の関係企業によって構成される「全国土壌改良資材協議会」においては、微生物資材の自主表示基準に基づく表示の推進や現地研修会等を開催し、より良い土壌改良資材の開発、普及を図っています。
この他、食品廃棄物のリサイクル推進のための肥料化、飼料化等に関心の高い食品関係企業や畜産農家等で構成される「全国食品・畜産有機資源リサイクル協会」、都道府県農業試験場の土壌保全調査関係業務に携わる者を構成員とした「土壌保全調査事業全国協議会」の事務局を担当しています。
土壌協会の賛助会員の加入募集
当協会には協会の目的に賛同し、後援していただける企業・団体・個人を対象とした賛助会員の制度があります。入会すると個別のアドバイスや情報提供の他、雑誌(「作物生産と土づくり」)の提供等のサービスが受けられます。
沿 革
当協会は、1947年に酸性土壌改良を推進する酸性土壌改良協会として発足しました。その後、1951年に業務の範囲を広げ、農林水産省認可の「財団法人日本土壌協会」が設立されました。2012年4月からは、公益法人制度改革に伴い土地生産力の増進、土壌健全化の促進、環境保全型農業の推進を目的とする「一般財団法人日本土壌協会」となりました。